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売却の手続き

親が認知症で施設に入ったあと、実家を売るには|成年後見と家庭裁判所の許可・費用と期間

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この記事の結論

  • 判断能力がない状態でした契約は無効です。認知症で判断能力がない親の家は、家庭裁判所に成年後見を申し立て、選ばれた後見人が代わりに売ります。
  • 施設に入って今は住んでいない実家でも、後見人が売るには家庭裁判所の許可が必要です。許可なしで売ると無効になります。
  • 後見の申立ての費用は収入印紙3,400円と郵便切手(医師の鑑定をするなら鑑定料)。家庭裁判所の決定(審判)までおおむね1〜2か月です。後見人は家庭裁判所が選び、家族が選ばれるとは限りません。
  • 今の制度では、家を売ったあとも後見は続きます。2026年6月に見直しの法律が成立しましたが、施行日は決まっていません(2026年10月時点)。
  • 親が生きているうちに売るなら、マイホームの3,000万円控除の期限(住まなくなってから3年後の年の12月31日)から逆算して、早めに動いてください。ただし後見人が売った場合にこの控除が使えるかは、国税庁の資料に書かれていません。税務署か税理士に確かめてください。

判断能力がないと、親は自分で家を売れません

民法では、判断能力(意思能力)がない状態でした契約は無効です。親に判断能力がないと、家族に売却を任せる契約もできません。代わりに売れるのは、家庭裁判所が選んだ成年後見人など(前もって任意後見の契約をしていれば、その任意後見人)です。

成年後見は、親の判断能力の程度で3つに分かれます。

種類親の判断能力家を売るには
後見欠けているのが通常の状態成年後見人が売る
保佐著しく不十分家を売る代理権を付けてもらった保佐人が売る
補助不十分家を売る代理権を付けてもらった補助人が売る

出典:e-Gov法令検索「民法」第3条の2・第7条・第11条・第15条(資料を見る)/裁判所「成年後見制度の概要を知りたい方へ」(資料を見る)・「居住用不動産の処分についての許可」(資料を見る)

成年後見の申立て:だれが・どこに・いくら・どれくらい

申し立てられる人本人・配偶者・四親等内の親族(子・孫・兄弟姉妹・甥や姪など)など。身寄りがないなど申し立てる人がいない場合は、65歳以上の人について市区町村長が申し立てることもあります
申し立てる先親の住所地の家庭裁判所。親が別の市の施設に入っているとき、住民票の住所と施設のどちらで決まるかは家庭裁判所で扱いが違います(東京家裁=住民登録の場所、大阪家裁=施設や病院を含む今いる場所)。申し立てる前に確かめてください
費用申立手数料 収入印紙800円(保佐・補助で家を売る代理権を付けてもらう場合は、その申立てごとに800円が加わります)+登記手数料 収入印紙2,600円+郵便切手(金額は家庭裁判所ごとに違う)。医師の鑑定をする場合は鑑定料(東京家裁は「一般的に10万〜20万円程度」と案内。全国では、2025年に鑑定をしたのは全体の約3.4%で、その約86%が10万円以下)
期間申立てから審判まで、おおむね1〜2か月(鑑定をする場合はさらにかかります)。2025年は約71%が2か月以内に終わっています
取り下げ申し立てたあとは、家庭裁判所の許可がないと取り下げられません。「希望した人が後見人に選ばれそうにない」という理由では、原則として認められません

出典:裁判所「後見開始」(資料を見る)・「家事事件Q&A」(資料を見る)/東京家庭裁判所「後見・保佐・補助開始申立ての手引」(令和7年4月)(資料を見る)/大阪家庭裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)」(資料を見る)/最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」(資料を見る)/法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」(資料を見る)/e-Gov法令検索「老人福祉法」第32条(資料を見る)

後見人は家庭裁判所が選びます。家族とは限りません

申立書に後見人の候補者として家族を書くことはできますが、必ず選ばれるわけではありません。だれが選ばれたかについて、不服を申し立てることもできません。

  • 2025年に後見人などに選ばれた人のうち、親族は約16.4%で、残りは弁護士・司法書士・社会福祉士などです。ただし、そもそも親族を候補者として書いた申立ては全体の約19.7%です(2つは数え方が違うので、候補に書いた人が何%選ばれたかはわかりません)。
  • 東京家裁は、候補者以外を選んだり、後見人を見張る監督人を付けたりする可能性がある例として「不動産の売買…が予定されている」場合を挙げています。

後見人の報酬は家庭裁判所が決め、親の財産から払います。法律で決まった額はありません。大阪家裁のめやすは月2万円で、管理する預貯金などが1,000万円を超え5,000万円以下なら月3万〜4万円です。家の売却など特に手間のかかる仕事をしたときは、報酬が加わることがあります。

今の制度では、後見は親の判断能力が回復するか、亡くなるまで続きます。家を売り終わっても、家族の意思でやめることはできません。

出典:裁判所「成年後見制度の概要を知りたい方へ」(申立時の留意事項)(資料を見る)/最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」(資料を見る)/東京家庭裁判所「後見・保佐・補助開始申立ての手引」(令和7年4月)(資料を見る)/大阪家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」(令和7年4月)(資料を見る)/法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」(資料を見る)

施設に入って空いた実家でも、売るには家庭裁判所の許可が必要

後見人が親の住まいを売るには、家庭裁判所の許可が必要です。裁判所は、この住まいに施設や病院に入る前に住んでいた家も含むとしています。許可を得ずに売った場合、その売買は無効です。

申し立てる人・先後見人(保佐人・補助人は家を売る代理権がある場合)が、後見を始めた家庭裁判所へ
費用収入印紙800円+郵便切手(金額は家庭裁判所ごとに違う。東京家裁・大阪家裁は110円)
主な書類売る必要があることを示す資料・売買契約書の案・固定資産の評価証明書・不動産会社の査定書・登記事項証明書
申し立てる時期家庭裁判所に事情を連絡してから買主と交渉し、契約の一歩手前で申し立てます。審理に日数がかかるので、取引の日は余裕をもって決めます(東京家裁・大阪家裁の案内)

大阪家裁は、査定額より低い価格で売る場合、その理由の説明書も付けるよう案内しています。許可の申立てにかかった費用を、売ったときの「譲渡費用」としてよいとした国税局の回答例もあります(個別の事例への回答です)。

出典:裁判所「成年被後見人(被保佐人、被補助人)の居住用不動産の処分についての許可」(資料を見る)・「家事事件Q&A」(資料を見る)/東京家庭裁判所「居住用不動産処分の許可の申立てについて」(資料を見る)/大阪家庭裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)」(資料を見る)/e-Gov法令検索「民法」第859条の3(資料を見る)/東京国税局 文書回答事例(平成27年1月19日)(資料を見る)

3,000万円控除の期限から逆算して動く

親が生きているうちに親の家を売るとき、期限の目安になるのは「マイホームを売ったときの特例」です。施設に入って住まなくなった家は、住まなくなってから3年後の年の12月31日までに売ることが条件の一つです。

後見の開始(審判までおおむね1〜2か月)、買主探し、許可の申立てと順に進むので、期限が近いときほど早めに家庭裁判所の手続案内で確かめてください。なお、後見人が売った場合にこの特例が使えるかを直接書いた国税庁の資料は見当たりません。使えるかは税務署か税理士に確かめてください。

出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等)(資料を見る)

特例の条件は「老人ホーム入居後の親の家を売却するとき、3,000万円控除の条件と期限」に、売った代金が親の預金になったときの施設の負担軽減への影響は「実家を売却すると負担限度額認定が外れることがあります」にまとめています。

売る期限を1分でチェック質問に答えると、使える特例・売る期限・控除の上限の目安がわかります

2026年の法改正:後見・保佐は「補助」にまとまります(施行日は未定)

成年後見制度を見直す法律が、2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。施行は「公布の日から2年6か月以内で政令で定める日」で、2026年10月時点で日付は決まっていません。

  • 変わること:後見と保佐がなくなり、必要なことだけを任せる「補助」にまとまります。必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば、利用を終えられるようになります。
  • 変わらないこと:補助人が親の住まいを売るには、家庭裁判所の許可が必要です。
  • 施行前に後見が始まった人:原則として、これまでのルールが続きます。施行後に家庭裁判所に後見の取消しを求めることはでき、取り消すかは家庭裁判所が決めます。

施行までは、今の制度で手続きをします。

出典:法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」(令和8年6月30日)(資料を見る)・「民法等改正法の概要」(資料を見る)

認知症になる前ならできる備え

どちらも、親に判断能力があるうちに検討するものです。

任意後見家族信託(信託契約)
しくみ将来、だれに何を任せるかを、親が公正証書の契約で決めておく親が家などの財産を家族に託し、決めた目的のために管理・処分してもらう契約
始まる時判断能力が不十分になったあと、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時から契約を結んだ時から
費用の例契約時:公正証書の基本手数料1万3,000円+登記嘱託手数料1,600円+収入印紙2,600円など。始めるとき:家庭裁判所への申立てに収入印紙800円+登記用1,400円など。任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決め、親の財産から払います契約の内容や、手伝ってもらう専門家によって違います
実家を売ること契約で任せる範囲に入れるかを決めます(入れない例もよくあります)契約で決めた目的と内容によります

認知症と診断されていても、すぐに判断能力がないとは限りません。任意後見の契約ができるかは、公証人が本人の説明や医師の診断などをもとに判断します。家族信託は、法務省のパンフレットでも、親が将来判断能力が衰える事態に備えて財産を子に託す例として紹介されています。成年後見などと組み合わせるかどうかは、弁護士や司法書士などの専門家の助けを借りて検討するよう書かれています。

出典:e-Gov法令検索「任意後見契約に関する法律」(資料を見る)/法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」(資料を見る)/裁判所「任意後見監督人選任」(資料を見る)/日本公証人連合会「任意後見契約」(資料を見る)/e-Gov法令検索「信託法」第3条・第4条(資料を見る)/法務省「知って活用 信託制度」(令和8年3月)(資料を見る)

費用が払えないときの助成

申立ての費用や後見人の報酬を助成する市区町村があります(成年後見制度利用支援事業)。対象や内容は市区町村ごとに違うので、親の住む市区町村の窓口で確かめてください。収入が少ない場合は、法テラス(日本司法支援センター)の援助(申立てを頼む弁護士・司法書士の費用の立替えなど)を受けられることもあります。

出典:法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」(資料を見る)/厚生労働省 事務連絡「成年後見制度利用支援事業の適切な実施について」(令和4年10月17日)(資料を見る)

この記事は、公開されている国の資料をもとにした一般的な説明です。手続きの細かい扱いは家庭裁判所ごとに違うことがあります。申し立てる家庭裁判所の案内を確かめ、税金は税務署か税理士に確かめてください。

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